十八通目 ほんとうのこえ

歌いたい。うまい歌をきくとあこがれとしあわせでとけそうになる。そしてわたしもこんな風に歌えたらなぁ、と夢をみる。だけどかなしいことにわたしの声はふとい。さわやかにおしゃれなかんじで歌いたいのに、声がすごくふとい。さわやかとかおしゃれからいちばん遠いところにあるような声であるし、そもそも音程も発声も不安定すぎて、きいていると不安になるような歌になってしまう。

声がふといことでメリットがあるかというと、これもかなしいことにぜんぜんない。ふといくせに、さわがしい場所でぜんぜん通らないふとい声なのだ。だからお店の注文がとても苦手だ。聞き返されないようにと注意深くおおきな声をだしてみても、十中八九は聞き返されてしまう。

自信のなさがあらわれているのかもしれない。すべてにおいて。今からでは、人生をやり直すのはむり。それはMURIMURI。やっと折り返し地点らしきところまできて、もうつかれきっているから頼まれたってやり直したくない。それはつまり努力を拒否することでもある。

うるさいのはきらいだから、うるさくないように生きたい、と願った結果がこれなんですかねもしかして。